「カギをなくした」と落ち込んで帰ったら鍵穴に差しっぱなしだった話

key_holeカギが見当たらなくて困ったという体験は、たぶん誰にでも一度や二度、あるんじゃないでしょうか。でもたいていの場合そのカギはどこか思いもよらない場所から出てきたりするものです。
わたしがマンションで独り暮らしをはじめたのは、東京の大学への進学が決まった春のことでした。一人娘であるわたしに対して両親は、若い女の子の独り暮らしは何かと危険だとか、ろくにご飯も炊けない世間知らずの娘に自炊ができるのかとか、随分と反対されたものです。そんな両親の猛反対を押し切って、ついに念願の独り暮らしをはじめたわたしは、はじめて手に入れたキャンパスライフとともに自由を満喫していたわけです。

そんな矢先、事件が起きました。いつものとおり大学に行き、授業もそこそこにサークルの部室に入り浸っていたわたしは、ふと自分のバッグの中身に違和感を覚えました。そこにはいつもあるハズのものがなかったのです。それはマンションのカギでした。
頭の中はパニックを起こしていたはずですが、そのときは不思議と冷静に「このことが親にバレたら、独り暮らしをやめて実家に戻れとうるさく言われるだろうな」などと考えていたのでした。

その日それまでの自分の行動を思い起こし、行った場所はくまなく探しまわったのですが、ついにわたし暮らすマンションのカギは見つからなかったのです。友達にも相談した結果、とりあえずマンションの管理会社に事情を話し、マスターキーか何かで自宅マンションに帰り、すぐにカギを取り替えることにしようということになりました。

マンションに着いて、自室玄関の前にいったとき、そこに見慣れたものがぶら下がっていました。失くしたと思ったカギが、挿しっぱなしのままになっていたのです。
ホッとしたのもつかの間、別の不安が持ち上がりました。このカギは、この瞬間までに誰にも合い鍵を作られていないでしょうか?この部屋には今、本当に誰も侵入していないでしょうか。